コンプライアンスInSight2017年 夏号

貿易ベースのマネーロンダリング対策に不可欠な視点

〜金融機関・企業双方に求められる協力体制とは

 貿易立国である日本にとって、グローバル規模で展開される取引がよりスピーディーかつ広範囲になった今日は、望ましい環境だと言えよう。こうして市場規模が拡大したことは、企業が持続可能な成長を続ける機会を増やすことにもなる。海外企業とのつながりをより密接にする例も増えて久しいものだ。
 一方で、この貿易という行為に乗じたマネーロンダリング「トレードベース・マネーロンダリング(TBML)」に対する警戒感を高める必要が出てきたことも見逃してはならない。金融機関はもちろん、TBMLだからこそ、商社やメーカーにとっても対策を怠るわけにはいかないのだ。

 通常、マネーロンダリング対策は金融機関の問題として考えられている。金融犯罪への対策強化を進めることは、国際的な信頼をも左右するものとなっており、KYC(Know Your Customer:顧客確認)などの対策を疎かにすれば莫大な制裁金のほか、様々な制裁措置を受ける恐れも生じる。当然ながら、これは貿易立国である日本において一企業や銀行にとどまらない問題となるだろう。

 そうしたこともあり、金融システムを悪用したマネーロンダリングについては、日本でも、取引の精査や不正な取引を未然に防ぐ努力が続けられており、徹底したAML(アンチマネーロンダリング)対策が進められている。

 また、古典的な手法である「不正な資金を物理的に輸送し、手渡しする」というものについても、税関をはじめとした機関による水際対策がなされている。

 しかし、貿易取引のスキを突いたTBMLについては、対策が極めて難しいというのが現状だ。その理由のひとつとして、貿易に関わるプレイヤーが多くなっていることに乗じて、年々その手法が巧妙化している点が挙げられる。
 資金や物資がテロ集団等に渡らないようにすることでテロ対策強化につなげようとする世界の総意に反して、経済のグローバル化が彼らに活路を与えてしまっている、との見方もできよう。
 国際金融規制の仕組みがテロ対策の最前線となっている以上、コンプライアンスの観点から見てもTBML対策には業界の別に関わらず協力体制を構築することが強く求められているのはこのためだ。

貨物

 では、なぜTBML対策にそうした協力体制が必要なのか、これが行われるメカニズムの概要をもって説明したい。
 通常、海外貿易は次のような流れで進められる。まず、売買契約が成立した後、輸入元が契約を翻意しないことを宣言する「Letter of Credit(信用書)」を輸出元に対して発行するように金融機関に依頼する。これを輸出元の金融機関に送り、輸出元に渡される。その後に、商品が輸送される、というわけだ。

 この間に、無関係な商品の取引や輸送ルートの変更・積替え、商品に関する虚偽の報告、カルーセル取引(架空の事業者や虚偽のインボイスで取引があったように見せかけて「仕入れ税控除」を騙し取る手法)の危険性、無関係な第三者による支払い、二重請求といったリスクを輸出入元・その担当銀行が抱えることになる。

 銀行は、AMLの遂行のため、積荷の内容や価格、輸送ルートの正当性を確認するわけだが、前述の内容は金融機関にとって必ずしも明るい分野ではなく、確認に必要な知識やリソースが乏しいのが現状だ。企業側へのヒアリングや情報提供依頼などで補うにしても、銀行・企業両者にとっての負担は大きい。

 加えて、企業側にはこれに協力する法的義務はなく、それも対応をより困難にしている。だが、先にも述べたとおり、企業側がTBMLに無関心でいられるか、というとそういうわけではない。企業にとっては莫大な制裁金よりも重大なリスクを抱える「レピュテーションリスク」があるからだ。

 たとえば、燃料補給の際に運搬船に不正な商品が積み込まれるケースや、「輸送ルート中に経済制裁対象国」が含まれる場合、さらに商品のすり替えの警戒も必要だ。また、万が一にも商品がテロ集団の手に渡った場合、商品そのものの損失などもさることながら、そのこと自体が明るみに出ることで企業の価値を著しく毀損させるリスクがある。
 世界が瞬時につながる時代において、そうした情報が伝播することによってもたらされる副次的な影響は計り知れない。

 では、これらのリスクを回避するにはどうすればいいのか? マネーロンダリング対策の第一人者であるデロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社 執行役員の小島英一氏と、トムソン・ロイター・ジャパン株式会社 代表取締役社長の富田秀夫氏が、現状と課題を語った。

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「トレードベース・マネーロンダリング(TBML)の規制強化〜貿易取引のライフサイクルに応じたきめ細かい対策が求められる時代に」をご覧ください。 (1.3MB)


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