コンプライアンスInSight2017年春号

不確実性が増す世界情勢

~日本企業が直面する“未知のリスク”を予測する

 2016年はグローバル規模で大きな変化が立て続けに起こった波乱の年であった。4月に公開されたパナマ文書は世界に衝撃を与え、5月に行われた英国のEU離脱の是非をめぐる選挙は “想定外”の結末となり再び世界を驚愕させた。さらに、11月には米大統領選挙でトランプ氏が勝利するという誰もが予想しなかった結果となった。このように激変した世界の有り様は、2017年に入って以降、本格的に国際社会に大きな影響を及ぼすことになる。海外進出のいかんに関わらず、日本企業もすでに様々な余波を受けているはずだ。

EU、米国、金融界における激変を振り返る

まず、英国のEU離脱決定は欧州での企業活動に大きな影響を与えている。EUの金融の中心地が英・ロンドンから別の都市に移ることを想定し、日本企業の現地法人が活動の拠点を移転させるなど、徐々に動きが見られるようになった。

他方、この変化は同圏内に様々な思惑を巡らせるきっかけを与えている。英国の堅調な経済状況を目にして、他のEU諸国も少なからず「離脱のメリット」を想像し、「これに続こう」と考える萌芽となっている。今年はオランダに続き、フランスやドイツなどで立て続けに選挙が行われるが、少なからぬ影響が出るのでは、との見方もある。その先には、欧州市場の細分化なども想定されよう。そうなれば、各国のローカルルールが増えるなど、日本企業が事業戦略を抜本的に見直す必要に迫られることも考えられる。

セミナーの様子

トランプ大統領の誕生は、貿易や投資分野ほか、今後の世界情勢に多大な変化を巻き起こすだろう。これは経済面だけではない。より根本的な問題として、「グローバリズムとポピュリズム」の二項対立があおられることが懸念されており、今後ことあるごとに世界が直面するリスクとして取り上げられることになりそうだ。既存ルールが180度変わることも予期され、世界が進む先の未来予想図がこれまで描いていたものとまったく違ったものになる可能性も高まっている。

最も企業への影響が見込まれるのは、パナマ文書の発覚に端を発した変化だ。各国がより一層の協調体制をもって金融ルール遵守の徹底をはかるよう、活発な動きが見られる。国際的課税逃れ対策(BEPS・税の情報交換)や登記された企業の実質的所有者情報を明確にしようとする取り組みが進められ、マネーロンダリングや汚職、脱税等の不正な資金の流れへの対処もより厳格になされることになった。多国間取引の総量が増す昨今、この変化に適応するためには制度自体への理解だけでなく、コンプライアンス遵守やコーポレートガバナンスの徹底といった中長期的な体制変更と企業文化の醸成が不可欠となってくる。

- 日本企業特有のリスクへの対応の必要性も増している

日本企業は「日本人同士なのだから、日本文化を体現していて当然だ」と考える節がある。そうしたマインドのもとに社内ルールを設定している場合も多いだろう。しかし、グローバル化が進むなかで、社員を構成する人種は多様化し、社員が海外に駐在するケースも増えている。こうした変化にもかかわらず暗黙知を“常識”として捉え、対策を怠れば、汚職をはじめ金融犯罪に巻き込まれるなど思わぬリスクを負うことになる。その先にあるオペレーション・レピュテーションリスクの両面を、経営者や法務・コンプライアンス部門担当者は理解する必要がある。

数年来の社会的課題である少子化、超高齢社会に関しても明確な打開策はまだ見えていない。市場の縮小が確実視される中、企業としては海外進出が最優先事項となっているはずだ。しかし、前述の通り、不安定化するEUや米南部とメキシコのゆるやかな実質的経済圏の崩壊といった変化など、意気揚々に、とはいかない状況となっている。全方位で不透明感が増す中で、踏み出すべきか否か、どこまで進むべきか、難しい判断が迫られるだろう。

では、日本企業はどのようにリスクを排除して持続可能な成長を続けていくべきか…。先日開催されたトムソンロイター主催「金融規制ジャパン・サミット2017」では、こうした諸問題について、日本企業が特に注目すべきリスクを理解し、これからの時代をレジリエントに生き抜いていくための考察がなされた。

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