アベノミクス5年目の評価
Jun. 2017

アベノミクス5年目の評価

<特集記事>
アベノミクスによる景気拡大はバブル期超え

 アベノミクスが5年目を迎えている。12年12月に始まった「アベノミクス景気」は17年4月で53ヶ月となり、すでに86年12月から91年2月の51ヶ月だった「バブル景気」を抜いた。低成長の長期景気回復で実感は少ないとの指摘も多いが、17年9月まで続けば65年11月から70年7月の57ヶ月だった「いざなぎ景気」を抜いて戦後最長の景気回復となる。アベノミクスを経済指標で振り返ろう。

景気動向指数はアベノミクスの最高値更新

 内閣府発表の景気動向指数(CI)が伸びを加速している。CIは、生産、雇用などの景気に敏感に反応する指標の動きを統合した指数で景気の現状および将来を予測するための指数であり、先行指数、一致指数、遅行指数が内閣府により月次で発表されている。6月7日発表の4月のCI一致指数(速報値)は117.7と前月比で3.3ポイント改善し、14年3月の117.6を抜いてアベノミクス景気で最高値となった。

前月比で寄与度が高いのは、投資財出荷指数、鉱工業生産指数、耐久消費財出荷指数、有効求人倍率、商業販売額(小売)など。消費が牽引しての景気回復だと言えるだろう。

消費者態度指数の上昇トレンドが続く

 内閣府から発表される消費動向調査の消費態度指数も上げトレンドが続く。トムソン・ロイターのデータからピックアップしたチャートが(図1)だ。消費態度指数は14年4月の消費税導入時の落ち込みから、ほぼ一貫して右上がりとなっている(オレンジ線)。 消費者態度指数を構成する消費者意識指数では、「耐久消費財の買い時判断(青線)」「収入の増え方(緑線)」の2項目が消費者態度指数とほぼリンクしながら上昇している。「雇用環境(紫線)」は、15年央まで下落傾向が続いたが底打ちして上昇し始めた。景気回復の実感は少ないとの指摘はあっても、消費、雇用、賃金とも消費者の意識は確実に上向いてきている。

アベノミクスの最初の三本の矢は「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「投資を喚起する成長戦略」だった。15年10月の内閣改造では、新三本の矢として「強い経済」「夢をつむぐ子育て支援」「安心につながる社会保障」を発表した。 日銀バズーカと言われた大胆な量的質的金融緩和や16年のマイナス金利の導入などの金融政策と各種の景気対策は確実に奏功していると言わざるを得ないだろう。

図1) 図1) 消費者態度指数

実質賃金が上がりデフレ脱却も見え始めた

アベノミクスの課題は長く続いた日本のデフレ経済からの脱却だった。日銀はインフレターゲットを2%に設定した。2%の達成は簡単ではないが、デフレをCPIの下落、賃金の下落とするのならば確実にその出口は見えてきた。

総務省統計局の消費者物価指数(CPI)で総合指数(生鮮食品を除く)は(図2)、14年4月の消費税上げ後前年同期比でマイナスが続いていたが、17年4月に100.1と15年11月以来のプラスに転じた(オレンジ線)。

厚生労働省の発表する毎月勤労統計調査では、実質賃金は14年をボトムに上げトレンドにある(青線)。16年度の実質賃金は前年度比で0.4%増加した。実質賃金の増加は6年ぶり、アベノミクス後では初めてだった。

株式市場は、堅調な消費とマクロ面ミクロ面での景気回復を好感して6月2日には2万の大台を超し15年8月以来の高値をつけた。今後の株価上昇もアベノミクスの進捗にかかっていると言ってもよさそうだ。

図2) 図2) インフレーションと雇用(前年同年比)


<サブトピック>
低金利、長期化、ハイブリッド債で社債市場の拡大が続く

 16年の本邦社債発行市場はマイナス金利政策下で調達環境が好転し急拡大した(図3)。発行総額はトムソン・ロイターの集計では、10兆8415億円と前年比で40.3%の増加となり4年ぶりの増加となった。発行件数でも586件と前年比で30.8%増だった。日本の社債市場で10兆円を超えたのは過去98年と09年のみで過去3番目の高水準。

17年の社債発行も3月末までで、発行件数は148件、総額は3兆円に達している。 前年の3月末時点では、件数は106件、2.2兆円だった。前年同期間比で、件数で39.6%、総額で36.4%増となっている。今年も年間で10兆円を超える規模が期待できそうだ。

日本の社債市場はローン市場の補完的市場であり、過去において市場が拡大するときはローン市場の機能が低下してローンによるコストが上昇しているときが多かった。16年の市場の拡大は、ローン市場の機能が正常に働いている中での、調達コスト低下、運用難による社債需要の増加、発行年限の長期化、ハイブリッド社債などの商品性多様化による影響が大きい。

図3 )マイナス金利で16年の社債発行額急増(兆円) 図3) マイナス金利で16年の社債発行額急増(兆円)

16年の社債の平均発行年限は、加重平均で11.71年と15年の9.13年から2.58年長くなった。2月には西日本旅客鉄道が初の40年債を発行するなど長期債が増え、年限が10年を超える超長期債の比率は16%を超えた。

ハイブリッド債の発行増も社債市場の活性化に寄与した。ハイブリッド債は、債券と株式の両方の性格を併せ持った証券で、「劣後債」「永久債」「優先株」「優先出資証券」などで株式の希薄化が生じない。金融機関や事業会社のバランスシート健全化のために発行されることが多く16年の発行額は3兆円を超えて過去最高となった。