ビッグデータ解析による投資が急拡大
May. 2017

ビッグデータ解析による投資が急拡大

<特集記事>
ビッグデータ解析によるセンチメント指数の有効性

 AIによるロボット運用がヘッジファンドなどで急速に普及しつつある。AIで解析し、アルゴリズムで発注し、まったく人間の手を介さないファンドも増えてきた。伝統的なアセットマネジメント会社においても、トラックレコードをとるためなどの目的でAI運用を始めたところも多い。

トムソン・ロイター・センチメント指数の活用方法

 トムソン・ロイター・センチメント指数(MARKETPSYCH INDEX)は、世界のニュースソース約4万件、SNS・ブログ・掲示板など約7000件のビッグデータの中から、市場に対する「センチメント」をマイニング技術によりリアルタイムで解析していく。

株式市場であろうが、債券市場であろうが、FXや商品取引だろうが、あらゆる市場に「センチメント」は存在する。どんな「センチメント」にも「サイクル」がある。「センチメント」を著すキーワードを解析することで、目に見えないセンチメントを、長期と短期で数値情報化し、指数として配信している。投資家は、センチメント指数からあらゆる市場の収益機会を見いだすことが可能だ。

センチメント指数は、世界130カ国と個別銘柄7500社以上をカバーしている。さらに31の通貨、34のコモディティなどもカバーしている。データは1998年から提供している。

米国株とセンチメント指数の相関性

 「米トップ500社の株価指数と長短センチメント指数(図1)」で具体的に見てみよう。センチメント指数は90日を短期、200日を長期としている。

図1) 米トップ500社の株価指数と長短センチメント指数 図1) 米トップ500社の株価指数と長短センチメント指数

短期センチメントが低下し長期センチメントを下回っている局面、いわゆるデッドクロス後の状態を「赤」で表示してあり、短期センチメントが上向き長期を超えている局面、いわゆるゴールデンクロス後の状態を「緑」で示してある。

2013年以降でセンチメント指数がレッドゾーンに入っていた時期は以下の6期間だ。

1)2013年8月
バーナンキFRB議長がリーマンショック後の大規模金融緩和(QE)からのテーパリングに言及

2)2014年6月
ECBがマイナス金利政策を導入

3)2014年10月ー11月
FRBのQEの停止発言と米大統領選中間選挙への懸念

4)2015年1月−3月
欧州通貨危機、欧州銀行危機でドイツ銀株価がリーマンショック後安値更新

5)2015年8月−16年6月
15年8月:中国株が大暴落 2ヶ月で時価総額の3分の1を失う
15年12月:米国が9年ぶりに政策金利を利上げ
116年1月:日銀がマイナス金利導入
16年2月:中国減速、世界景気減速懸念から原油価格が30ドル割れ

6)2017年5月
地政学リスクとトランプ大統領政策懸念

米トップ500社の株価指数は、グリーンゾーンでは大きな調整局面もなくほぼ右上がりのトレンドとなっている。グリーンの時はリスクオンの状態と言い換えてもいいかもしれない。一方、6回あるレッドゾーンの期間は、市場のメジャーな調整期間と重なることが多くリスクオフの状態であることが多い。しかし、15年後半のようにレッドゾーンでも米国株が上がった時期もある

すなわち、米トップ500社の株価指数の長短センチメント指数は、テールリスクの回避や大きな調整によるドローダウンを防ぐための指標としてはかなり機能しているように見える。市場のストレステストと同じような役割をもっているかもしれない。

センチメント指数のロジック

 センチメント指数は、ビッグデータから「恐怖、喜び、信頼」といった市場に対する感情、「業績予想、金利予想、ホジション」といったファンダメンタルズ、「中央銀行、M&A、訴訟」といったイベントなどをキーワードとして解析している。したがって、特にストレスには敏感になる傾向が強いのだろう。

センチメント指数のユーザーとしては、クオンツ投資家やクオンツトレーダーのアルゴ取引、グローバルマクロのヘッジファンド、FXやコモディティのトレーダー、商品・エネルギー会社、ウェルスマネジメント、リスクマネージャー、エコノミストなどを想定している。


<サブトピック>
人米ヘルスケア企業のCLOがホット・イシューに

 米ヘルスケアセクターのシンジケート・ローン市場におけるプレゼンスが上がっている。インスティチューショナル・ローンやローン担保証券(CLO)の残高では、テクノロジーセクターに次ぐ2位の存在になった。特にセカンダリーでの取引が活発化している。

プライマリー市場における17年第1四半期のヘルスケアセクターのレバレッジドローン(ハイ・インカム・ローン)の発行残高は、市場全体が前期比25%減と減速しているのに対して同70%増の212億ドル(約2.4兆円)と大きく伸びた。インスティチューショナル・ローンは184億ドル(約2.1兆円)で、市場全体が15%増なのに対し同セクターは約2倍になっている。

セカンダリー市場での注目度はさらに高い。ヘルスケアセクターのインスティチューショナル・ローンの残高はテクノロジーセクターの13%に次ぐ2位に上昇し10%を占めている。

セカンダリーでの平均ビッドプライスは、市場全体を上回る上昇。平均ビッドが100を上回るローンの比率は、9ポイント増加し49%まで達した。一年前の15%から急上昇している。ローンの残高の47%が利回り5%以下まで買われており、10%を超えるのは8%程度しかない。格付けで言うと、ダブルB(BB)格のもので4%程度。投資不適格債(シングルB以下)で6%程度。

人気を支えているのは、デフォルト比率が低いことと、リファインスの比率が高いことだろう。フィッチによると、デフォルトの比率は12ヶ月ではゼロ、07年から16年まででも0.7%程度だ。リファインス比率が高く、レバレッジドローンもインスティチューショナル・ローンでも第1四半期の発行額のうちの70%に達している。投資家にとってリファイナンス需要が多いと言うことは継続購入することで現状のポートフォリオを維持しやすいことになる。

ローン担保証券(CLO)市場におけるヘルスケアセクターの残高は10%程度。同セクターの人気は急速に高まっている。パー以上の比率は58%まで達している(図2)。

図2) 米国CLOにおけるヘルスケア・ローンのセカンダリー市場価格の分布 図2) 米国CLOにおけるヘルスケア・ローンのセカンダリー市場価格の分布

CLOファンドマネージャーはヘルスケアセクターのCLOの組み入れ比率を増やており、第1四半期ではヘルスケアのCLOの61%が買いだった。平均買い入れ価格は99.39ドル。99から100のゾーンのヘルスケアセクターのCLOはホット・イシューだと言えよう。