決算発表のトレンド予測の重要性
Feb. 2017

決算発表のトレンド予測の重要性

<特集記事>
「決算発表レポートアプリ」はアイディア構築の強力なツール

 株式運用において、決算発表は最も大事なイベントの一つであるということに異論のある投資家はいないだろう。セクターや個別銘柄の決算分析は、ポートフォリオのアルファを生み出す重要ファクターだ。最近の傾向では、決算サプライズがあった場合、デイトレーダーの注文やアルゴリズムの自動売買などが集中し、銘柄のボラティリティが急上昇することが多くなっている。あらかじめ株価トレンド予測のアイディアを構築しておくアプローチの重要性は高まっている。

「決算発表レポート」は決算発表シーズン中、既に発表を終えた上場企業の実績値の収益傾向を詳細にモニターし、決算発表を控えた企業に実際にどのような影響を与えるのかを分析する新しいEikonアプリだ。決算発表済み企業については、アナリスト予想に比べて実績値がどうだったのか、発表後に株価がどう動いたかなどを、地域・セクター・銘柄レベルでトレンドを把握できる。今後発表する企業については、スマートエスティメイトを使うことであらかじめ市場のサプライズを予測できることが最大の特色だ。

スマートエスティメイトとは、レーティングの高いアナリストの直近の業績予想により大きなウエイトを置いて計算する加重平均のアナリスト予想で、トムソン・ロイターが独自に提供している。単純平均のアナリスト予測より、正確で先行性のある収益予想が出来る可能性が高い。ある銘柄のスマートエスティメイトがコンセンサス予想平均から2%以上離れている時は、7割近くのケースで収益サプライズが起こることが実証されている。

■「決算発表レポート」での株価トレンド予測 具体的にEikonをつかって16年10−12月期決算(Q4)を分析したのが(図1)だ。

図1) 図1)

「アーニングス・サマリー」をみると、2月14日時点で、対象741社のうちすでに96%の企業が16年Q4の決算発表を終えており(水色)、55%の企業の実績値(優先指標は営業利益)がアナリスト予想を上回った(緑/赤の横棒)。アナリストの予想平均値を0.9%上回る好決算だった(Q4サプライズのReported Actual覧)。

Q4の実績値が大きく予想平均値を上回ったセクターは以下の4セクターだった。

注)セクター分類はTRBC(トムソン・ロイター産業分類)の「経済セクター」を使用

たとえば、素材セクターの場合、ポジティブサプライズの銘柄群の株価は発表後2日間で0.9%上昇し、ネガティブサプライズの銘柄群は2.4%下落している(プライス・アクション2d覧)。

また、決算未発表企業の「予想サプライズ」(スマートエスティメイトとアナリスト予想平均値の差)をアグリゲイトした数字「Yet to Report Predicted」を見ると、未発表の企業群の予想サプライズはアナリスト平均を14.7%下回っているため、今後発表される決算が、予想平均値に対してネガティブである(下振れする)可能性が非常に高いことを示唆している。セクター別では、テクノロジーで11.8%のポジティブサプライズが期待出来る一方で、工業セクターは13.3%のネガティブサプライズが予想されている。

■「決算発表レポート」で個別銘柄スクリーニング ポジティブサプライズの多かった素材セクターで1銘柄をピックアップしてみよう。素材(Basic Materials(66))をクリックするとすでに決算発表済みの企業の一覧が表示される。66社のなかから、高い実績値サプライズ、 高い予想サプライズ、決算発表直後の株価の反応がポジティブなどのクライテリアで銘柄を選んだのが三井金属鉱業(図2)だ。

図2)
三井金属鉱業(5706.T)
決算発表日:2017年2月13日
図2)三井金属鉱業(5706.T)決算発表日:2017年2月13日

実績値サプライズ:38.4%
Q1業績予想変化率:2.96%
決算発表後2日間での株価の上昇率:13.8% 
予想サプライズ:2.3%

アナリスト8人中、レーティング上位3名のアナリストが上方修正した(2名は決算発表後の上方修正)。うち2名の過去の予想正確度は4つ星なので、今回の彼らの予想が正しくなる確率は非常に高い。上位3名のアナリストのスマートエスティメイトでのウエイトは47.3%の比重を占めている。予想サプライズは2.3%なので、17年3月期のポジティブサプライズが高い確率で期待できそうだ。

三井金属鉱業の(図2)のチャートをみると、スマートエスティメイトはアナリスト平均値に先行しており、株価も連動して動いていることがよくわかるだろう。

銘柄コード「5706.T」をクリックすると、この会社のより詳細な情報にアクセスすることが出来る。レーティングサマリー(図3)では、 17年2月14日時点で三井金属を「強気買い」「買い」としているアナリストは3人。1月より1人増え、レーティング平均は0.1ポイント上昇したが、大半が「保有」のままだ。過去の傾向では業績の上方修正とレーティングや株価の相関関係は高いので今後が注目される。

図3) 図3)

「決算発表レポートアプリ」は、今回紹介したような独自データをタイムリーに投資家に提供することで、決算トレンドの分析を可能にし、新しいアイディアの創造をサポートする。また、国・地域別のリビジョンインデックス(過去1ヶ月の上方修正企業数—下方修正企業数)をフォローできるため、世界市場の比較やアセットアロケーションのツールとしても有効活用ができそうだ。


<サブトピック>
2016年第4四半期に株式投信に大量の資金流入

 トムソン・ロイターグループの投信データを提供するリッパー社によると、2016年年間の日本の投資信託のフロー(ETFを除く)は3兆2341億円の流入となった。株式型投信が2兆1304億円の流入で人気を牽引、マネーリザーブファンド(MRF)などマネー型の資金フローも1兆5141億円増えた。一方、債券型が1兆71億円の流出だった。

四半期別でみると、16年の第4四半期から、日本の投信フローのトレンドに変化が見え始めた。年間で2兆円以上流入していた株式投信が資金流出に転じたからだ。16年第4四半期の投信へのフローはトータルでは9828億円の流入だったが、世界的な金利急上昇による債券価格の下落を懸念して債券型が3048億円の流出となり流出が拡大した。これまで流入を牽引してきた株式型は一転して6870億円の流出となった。

安全資産とされるマネー型の投信に第4四半期で1兆9559億円もの流入となった。投資家は、金利上昇で価格が下落しやすい投信を解約して、MRFに資金を待機させた公算が高い。投信協会によると12月のMRFの残高は史上最高に達している。この待機資金が、今後どこにシフトするかが注目されよう。

図4) 図4)