ダイバーシティにアルファを求めて
Dec. 2016

ダイバーシティにアルファを求めて

<特集記事>
ESG観点の新たな「ダイバーシティ&インクルージョン指数」

 ESG投資が世界的に拡大している。ESG投資の世界の運用資産残高は、GSIA(Global Sustainable Investment Alliance)の2014年調査で約21兆ドル(約2400兆円)に達しており、2012年調査の約13兆ドルから2年で60%増と急増している。2015年以降もESG投資は引き続き拡大している模様だ。日本でもGPIFがESG投資を本格化参入することでますます注目度が上がってきた。

トムソン・ロイターでは今年9月に、グローバルなESG投資の新たな一つの指標となるダイバーシティ&インクルージョン・インデックス(D&Iインデックス)をローンチした。

ダイバーシティ&インクルージョン・インデックス

D&Iインデックスは、「多様性」「受容性」「人材開発」「メディアでの論争・物議」の4つの基本部門を構成する24の評価ポイント(図表1)によって、職場でのダイバーシティ(多様性)とインクルージョン(受容性)が最も進んでいる世界の企業上位100社を選出している。指数は、評価基準のそれぞれを市場の重要度および各構成銘柄の同ピア内で比較し、時価総額ウェイトをかけて算出している。

D&Iインデックスは、トムソン・ロイターのフラッグシップの金融情報ツール「トムソン・ロイター・アイコン(アイコン)」から取得が可能だ。

指数を構成するデータは、世界の6,000社以上の企業について、相関的なパフォーマンスを透明かつ客観的に測定し、異なる視点での見識を提供することが可能なトムソン・ロイターのESGデータベースを利用しており、指数のカスタマイズも出来る。

ダイバーシティはパフォーマンスに影響しはじめた?

ダイバーシティは、パフォーマンスへのアトリビューションは限定的だが、サステナブルな社会をめざして社会企業の社会的責任(CSR)として欠かせない投資であるという見方が支配的であった。ここにきて、ダイバーシティは成長へのエンジンとして、パフォーマンスを作用するという論点も生まれつつある。業界を超えて全世界の企業に影響を及ぼすという視点から歴史的な転換点を迎えているのかもしれない。

ESGに焦点を合わせ、きちんと投資をする企業のパフォーマンスはより強固で長期収益性が望めることがD&Iインデックスの相対パフォーマンス(図表2)から見て取れる。

D&Iインデックス(オレンジ線)とトムソン・ロイター・グローバルエクイティ指数(紫)の5年間の相対パフォーマンスでは、グローバルエクイティ指数が40.75%の5年間リターンなのに対してD&Iインデックスは83.55%のリターンになっている。明らかにD&Iインデックスがアウトパフォームしている。

図2) D&Iインデックス相対パフォーマンス D&Iインデックス相対パフォーマンス

D&Iインデックスの直近のトップ25が以下の企業だ(図表3)。トップはニュージーランドのコンタクトエナジー社、2位がスイスのノバルティス社、3位が米ジョンソン・エンド・ジョンソン社となっている。日本の企業では、トップ25にはアステラス製薬の一社だけが6位に入っている。

図3) D&Iインデックスのトップ25企業 D&Iインデックスのトップ25企業

直近のインデックス構成の100銘柄を国別で見ると、米国が30社、フランスが8社、日本が6社となっている。国別のESG投資でもアルファが出るのかを確認するため、採用銘柄数の多い米国とフランスについて、国別のインデックス構成銘柄でカスタムD&Iインデックスを作成し、各国のベンチマークと相対比較してみた。(図表4、5)

図4) D&Iインデックスのトップ25企業 D&Iインデックスのトップ25企業

図5) 仏D&Iインデックス相対パフォーマンス D&Iインデックスのトップ25企業

米国のD&Iカスタム指数は、S&P500指数とほぼ同様なトレンドとなっており、明らかなアルファを見いだすことはできなかった。仏のD&Iカスタム指数は、CAC40指数にむしろ劣後している。D&I先進国のESG投資を見る限りでは、カスタムD&Iインデックスがベンチマークをアウトパフォームしているということはなく、ダイバーシティがアルファを生み出していると結論することは出来ない。

ESG投資は世界で定着しつつあるものの、アルファに対するアトリビューションはまだまだ解析されていないのが実情だ。サステナブルな社会をめざし、CSR投資としては意義が高いことは明らかであり、ファンドに対するアルファはこれから研究が進んでいくことだろう。


<サブトピック>
グレートローテーションの動きを週間ファンドフローでウオッチ

 トムソン・ロイターのリッパーは世界の投資信託のデータを提供している。週間単位でグローバルなファンドのフローをアセットクラス別で追うことも出来るので世界の資金の大きな流れをつかむためには有効なデータだ。

米大統領選でトランプ氏が勝利して以降、米国10年債が急落、米株式市場は連日の過去最高値更新するトレンドになっている。日本でも同様の動きだ。30年間続いていた債券市場の大きなトレンドが終焉し、株式の時代になるという「グレートローテーション」が起き始めたとの観測も増えてきている。

11月最終週のファンドフロー(図表6)では、米国のマネーマーケットファンドが175.2億ドルの流入で前週に引き続き資金を集めている。欧州のミックスアセットにも23.8億ドルの流入だ。株式ファンドでは、セクターファンドの製造業に9.2億ドルの流入があった。

流出が目立つのは、ユーロのマネーマーケットファンドの67.8億ドル、英ポンドのマネーマーケットファンドの34.5億ドルだ。米国の地方債も10.9億ドルの流出。トランプトレードで、債券から株、欧州から米国への資金の流れがでてきていることがファンドフローで確認出来る。

12月のFOMCでFEDは1年ぶりにFFレートの誘導レートを25bps利上げした。堅調な経済指標に支えられて、2017年には3度利上げがあるという見方も出てきている。こういった継続的な利上げ観測も資金の流れをサポートしているのだろう。実際にグレートローテーションは起きるのだろうか?今後も週間ファンドフローには注目が必要だろう。

図表6)11月最終週のファンドフロー 11月最終週のファンドフロー