本格的にESG投資に乗り出したGPIF
Sep. 2016

本格的にESG投資に乗り出したGPIF

<特集記事>
ESGのパフォーマンスとアトリビューション

 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は今年7月22日、ESG要素を考慮した国内株式のパッシブ運用の指数を公募すると発表した。締め切りは9月末。いよいよGPIFが本格的にESG投資に動き出したことで今後さらに注目が高まってくることは必至だ。

GPIFのESG投資の狙い

 グローバル化の進展で経済活動は国境や地域の制約を超えて一体化している。その結果、環境問題をはじめとした地球レベルでのサステナブルな企業行動やガバナンスの重要度が増してきている。

投資行動においても、企業のサステナブルな成長と投資機会を見極めるために、バランスシートなど財務の分析だけでなく、ESGの観点から企業価値を評価していくことが求められている。

GPIFがESG指数募集の考え方として示した以下の文章がESG投資の本質を表している。「環境や社会の問題などネガティブな外部性を最小化することを通じ、ポートフォリオの長期的なリターンの最大化を目指すことは合理的である。また、環境・社会・ガバナンス(以下 ESG)の要素を投資に考慮することで期待されるリスク低減効果については、投資期間が長期であればあるほど、リスク調整後のリターンを改善する効果が期待され、当法人が投資にESG要素を考慮することの意義は大きい。」

GPIFのESG投資取り組みは、15年4月に発表した中期計画の中で、株式運用における考慮事項として、収益確保のために非財務要素であるESGの考慮について検討するという方針を示したことから始まった。2015年9月には、スチュワードシップ責任を果たす一環として国連責任投資原則(PRI)に署名した。運用受託機関が行っている投資先企業へのエンゲージメントの中でもESGを考慮した企業価値の向上や持続的成長のための自主的な取組みを促している。そして今度のESG投資の指数の募集だ。

ESGのアトリビューションは測定困難

 トムソン・ロイターでは、データストリームのASSET4でESGデータを時系列で提供している。ESGデータを提供している会社をユニバースに、E、S、Gをそれぞれスコアリングしランキングしたデータだ。株価やファンダメンタルズといった他のデータと組み合わせることが容易で、各種の分析、ベンチマークとの比較が可能である。

2015年のESGスコアベスト10(図表1)は、大和証券がトップに立った。14年の11位から急上昇している。2位のソニーも16位から上昇、3位の東京海上も20位から上昇している。上位の企業はランキングの順位の変動こそあるが、ほとんど毎年上位を占める企業であり、ESGの優等生といえるだろう。

図表1 ESGスコアベスト10

残念ながら、ESGスコアと業績や株価との明確な相関関係を測定するのはまだ難しい状態だ。ガバナンススコア(G)と会社の本質的な利益を示すEBITDAとの相関(図表2)をみても相関関係は薄い。とくに東証の時価総額上位を占めるような大企業においては相関はほとんどなさそうだ。

図表2) 日本企業のEBITDAとガバナンススコアの相関関係 図表2 日本企業のEBITDAとガバナンススコアの相関関係

日本を代表する企業として日立のESGスコアと株価とROEの推移を追ってみると(図表3)、ROEと日立の相対株価(対TOPIX)には正の相関が確認出来るが、ESGスコアとの間には明確な相関関係は見いだせない。ESGそれぞれのアトリビューションを確認することも難しい。

図表3) 株価、ESGスコアーとバリエーション 図表3) 株価、ESGスコアーとバリエーション

今回のデータからは、ESGスコアと株価・企業収益との明らかな相関関係は見当たらなかった。パターンがなかなか見つかりにくいというのが現在のESGの一つの重要な帰結である。パフォーマンスの測定、ESG基準や意思決定プロセスなどに関する透明性の確保、ESGデータの比較性など、新たな課題も立ち上がってきている。GPIFのESG指数の募集にどのようなメソドロジーでどのようなパフォーマンス実績をもった指数が応募してくるのか注目されよう。

GPIFがESGを推進し始めたことで、今後、ますますESG投資の注目度が高まることは確実だ。もし、ESG要素がリターンにつながるならば、ESGへの取り組みに優れた企業に資金が集まり、それらの企業は集めた資金でさらに収益性を向上させ、投資家により多くのリターンを返すことができるようになる可能性がある。仮に、今後もESG要素と株価の相関性を見いだせないとしても、サステナブルな社会への貢献のニーズが高まっているため、ESG投資をする意義は高いだろう。

ESG投資の資産は今後も高い伸びが見込める。企業によるESGデータの開示やデータの信頼性、質の向上などが進み、さらにESGが一般的な投資慣行へとなることを期待したい。

<サブトピック>
ロイターの短観と為替レート

 ロイター短観の9月調査(調査期間は8月1日から16日)の製造業の業況判断DIは2.0となり6月時点の5.0から3.0ポイント悪化した。かろうじてプラスは保ったものの、直近では2014年6月時点での21.0をピークに下落トレンドにある。

ロイター短観は、アンケートによる景況判断のDI指数として、資本金10億円以上の中堅・大企業400社を対象に四半期毎に実施している。日銀短観よりも先に発表するため、日銀短観の先行指数として利用されることが多い経済指標だ。

ロイター短観とドル円レートの長期の推移(図表4)をみると、ロイター短観は為替の動きに先行する傾向がある。相関関係は特に2003年くらいから強くなっている。短観が下降トレンドになると追って円高になっている。今後の景況感がさらに低下しマイナスに転じるようだと、もう一段の円高があるかもしれない。アベノミクスで2013年以降続いていた日本の好景気も極めて重要なポイントにさしかかっている。

図表4) ロイター短観とドル円レートの推移